鏡餅といえば、お正月の定番。みかんをのせた白い丸いお餅が2枚重なっているのを想像します。
昔は自宅でついた餅で、つくって飾ったものですが、現代では、真空パックの鏡餅をスーパーやあちこちのお店で見かけます。
お餅をつかなくても、鏡餅が手軽に飾れるようになりました。
真空パックなので、乾燥してお餅がカチカチになることも無く、パックをはがせば取り出すことも簡単でとても便利です。
今回は鏡餅の由来と紅白の意味について、裏白などの飾り方と期間についてのお話しです。
お正月の知恵袋が、またひとつ広がりますよ。
鏡餅の由来は?
鏡餅とはどのようなものか、少し説明しましょう。
基本的には、三宝という台の上に、紅で縁どってある四方といった紙を敷きます。そこに裏白というシダの葉っぱをハの字に敷き、御幣(ごへい)・四手(しで)という紅白の紙細工を、やはりハの字に置きます。その上にお餅を重ねて置き、お餅の上に橙か、みかんをのせて完成です。
では次に、そんな鏡餅の由来についてお話ししましょう。
お餅の丸いところが昔の鏡に似ているところから「鏡餅」と名付けられたようです。
鏡は、「三種の神器」(三種の宝物)と言われるひとつで、宝物の象徴だったのです。
これをお正月に歳神様への供え物として飾り、この鏡餅には歳神様が宿るとされていました。
鏡開きの後(鏡餅を下げて食べること)、歳神様にお供えした固くなった餅を食べることを、「歯固めの儀式」といい、年始に歯の健康を祈る儀式がありました。
鏡餅を御供として食べることで、一年を健康に過ごせ(お餅は長く延びることから)長寿を願っていたのです。
鏡餅の紅白には意味がある?
鏡餅と言えば、白いお餅がふたつ重なっているものだと思いますが、実は、紅白の色のお餅の鏡餅があるんです!
紅白の鏡餅は、現在では、なんと「金沢」などで見られます。
これは、室町時代に足利家の家臣が、朝廷に反発し、お正月の鏡餅に紅白の花びらの餅(菱餅)を作って将軍に献上したことが始まりです。
その形を加賀藩の前田家が受け継ぎ、前田家のしきたりとなっているのです。
外様大名として、プライドを貫いた前田家の、中央権力へのささやかな抵抗だったのでしょうか。
当時、前田家の鏡餅は「上が白、下が紅色」だったそうですが、殿様と同じでは申し訳ないと、庶民は、「上が紅色、下が白色」と、逆にして飾るようになりました。
この地域のスーパーなどで販売している鏡餅は、「上が紅色、下が白色」です。
「紅白」は縁起物というイメージですが、「紅白」の鏡餅の背景には、加賀藩前田家の、プライドがあったのですね。
鏡餅の飾り方
それでは、裏白という葉の飾り方など、鏡餅のお飾りの飾り方を見ていきましょう。
橙(だいだい)
「代々」とも言われる。鏡餅のてっぺんにのせます。果実は1本の木に何代もの実がなることを、家族繁栄、代々家が続くことを願うものです。
御幣(赤と白の紙垂れ)
雷光(稲光)を型取っていて、神霊が地上に降りて来る形を表しています。赤は魔除け、白一色は四手と呼ばれ、四方に手をひろげて繁栄を願うものです。
裏白(シダの一種の葉)
表面が緑色で裏が白いため、清廉潔白の意味を表す。また、葉の模様が対になっているので、夫婦仲むつまじく共に白髪が生えるまでという長寿を願う。
四方紅(鏡餅の下に敷く紙)
四方を赤で縁取り、天地四方の神を崇め、災いが無いように一年の繁栄を願うものです。
三宝(鏡餅を乗せる台)
三つの方向に穴があるためこう呼ばれています。神様や尊い方への献上の際に物をのせたり、お供えをする際に使用される台です。
こんなふうに、お飾りにはひとつひとつに込められた意味がありました。
鏡餅を飾る期間
次に、鏡餅を飾る期間についてお話ししますね。
飾り始める時期については特にきまりは無いようです。
一般的には、末広がりの12月28日が、縁起がいいとされています。
これは、お正月の準備のお餅をつく日や、門松を飾る日などと同じように、29日と31日は避けるのがよさそうです。
では、いつ下げるのがいいかと言いますと、松の内(関東1月7日・関西1月15日)の間には下げてはいけないらしく、一般的には、松の内の後、1月11日が、鏡開きの日と言われていますが、関西などは1月15日や20日にするところもあります。
まとめ
今回は「鏡餅の由来は?紅白には意味がある?裏白の飾り方と期間も」について、お話してきました。
昔は鏡という宝物が丸い形をしていたので、お餅もそれに合わせて「鏡餅」とし、歳神様にお供えしました。
紅白の鏡餅には、金沢の加賀藩の前田家の歴史が関係していました。
裏白などのお飾りには、それぞれきまりや意味がありました。
鏡餅を飾る期間は、一般には1月11日までです。下ろして割る日を鏡開きと言います。
昔の人々が、お正月の鏡餅に込めた、健康や長寿への願いをうかがい知ることが出来ました。
ひたすら一生懸命にお米を作り、与えられた時代や環境を無条件に受け容れ、新しい年を迎えるための準備の高揚感で活気づく日々を喜び、何の欲もなく、ただ家族が健康で長生きができるように、そんなささやかな願いを、年始に歳神様に祈る・・・鏡餅はそんな人々の大切な歳神様の拠り所であり、日本のお正月文化の象徴なのかと思うと、なんだかとても、愛おしくなってきます。