八百長の意味

「肩透かし」「ぶちかます」「八百長」日常でよく使う言葉ですが、これらの言葉の共通点がおわかりになるでしょうか。

「肩透かし」は意気込んで向かってくる相手をまともに受け合わず、軽くかわしてしまうというような意味です。
「いきり立っている相手に冗談を言って肩透かしを食わせる。」というような使い方をする言葉ですね。
実は、「肩透かし」という言葉、相撲が語源なのです。

もともと、相撲で前に出てくる相手を体を開いて避けるようにしてかわすことを肩透かしといいました。
実際に横綱がこれをやるとブーイングになってしまいますが、肩透かしというのはもともと相撲のテクニックの名前だったんですね。

そして、「ぶちかます」という言葉。
こちらは、相手に強い打撃を与えるというような意味です。
「敵に一発、ぶちかます。」などのように使いますね。

最近できた若者言葉なのではと思ってしまいますが、実はこちらも相撲で使われていた言葉なのです。
相撲で立ち上がりのときに、相手の胸に頭から強く体当たりすることを「ぶちかます」といったのです。
こちらももともと相撲用語だった言葉なのです。

さすが、日本の国技ともいわれる相撲。
その相撲関連の言葉が知らない間に、私たちが日ごろよく使う言葉になっていたのですね。
最初に挙げた言葉はすべて相撲に語源を持つ言葉だったのです。

では、「八百長」という言葉はどんな意味で、相撲とどんな関連があるのでしょうか。

フクちゃんフクちゃん

今回は、八百長の意味や語源、由来のお話し。
最後までお付き合い下さい。

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八百長の意味とは?

辞書を調べてみると「八百長」とは、「真剣な勝負ごとと見せかけて、一方がわざと負けるうわべだけの勝負をすること」という意味であるとわかります。

プロスポーツの世界でも、ときどき前もって勝負を打ち合わせておくという八百長試合の事件が起きたりしますね。

また、なれあいでことが運ぶことも八百長といったりします。
「八百長の質疑応答」というと、真剣な議論ではなく、なんとなく結論が決まっていて行われる質疑応答のことを指します。

日本で有名な八百長騒ぎとしては、「山岡事件」や「黒い霧事件」が有名です。

「山岡事件」

山岡事件は1965年に起こった競馬での八百長事件。
「山岡」というのは事件の中心であった人物の名前です。

中央競馬の騎手も巻き込んだ八百長事件ということで、中央競馬史上最大の不正事件として今も語り継がれている事件です。
この事件に関わった暴力団員二名と中央競馬の騎手四名が逮捕され、騎手たちは競馬界から永久追放されるという大きな事件となりました。

「黒い霧事件」

黒い霧事件は、プロ野球を舞台にした八百長事件です。
1969年から1971年に発覚した事件で、プロ野球の関係者が金銭の受け渡しを伴う八百長に関わったという事件です。
八百長に関わったとされる選手たちが永久出場停止や長期間の出場停止、年俸の減額という処分を受けることとなりました。

また、処分された選手の中には、この件とは別にオートレースの八百長事件にも関わっていたとされ、それに関わったオートレースの選手も逮捕されるという大きな事件となりました。

日本では、このような八百長事件が起こらないよう、公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)やJリーグなど、合法的な賭け事の対象となるスポーツに関しては、選手に対して八百長に対する刑事罰の規定が設けられています。
みんなが楽しむスポーツで八百長と呼ばれるようないかさまがあると一気に興ざめになってしまいますよね。
スポーツは特に公明正大にやってほしいと思います。

また、スポーツの世界以外でも八百長事件は起こっています。
1950年代後半にアメリカであるクイズ番組を舞台に起こった大規模な八百長事件が有名です。

クイズ番組「21(トウェンティワン)」

当時、高額な優勝賞金が出ることで話題だったクイズ番組「21(トウェンティワン)」
一般の視聴者が勝ち抜き戦でクイズ王の座を目指すという人気番組でした。

あるときユダヤ人の男性が長い間勝ち続けていたのですが、あまり華がないということでスポンサーから疎まれるということがありました。
番組側はもっとイケメンをチャンピオンにということで、容姿端麗で教養もあり家柄も完璧という白人の大学講師を最強のチャンピオンにすることを思いつきます。

結局、その白人大学教師はクイズの答えを教えてもらい、多額の賞金と国民的な人気を得ることになります。
内部告発によって事件が明るみに出るとアメリカ放送市場の一大スキャンダルとなり、番組関係者は解雇、白人男性は大学をクビになるという結末を迎えます。

この事件は後に、『クイズ・ショウ』という映画に描かれることになります。
Quiz Show(クイズ・ショウ)

はじめは大きな罪悪感も無く、人々が少しずつ八百長事件に加担していく様子がスリリングに描かれています。
八百長事件がなぜ起こるのかを知るにはとても面白い映画となっています。
気になる方は、是非映画もチェックしてみてください。

さて、少し話がそれてしまいましたが、なぜ「いかさまの勝負」のことを「八百長」というようになったのでしょうか。
次に、その語源を探っていくことにします。

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八百長の語源や由来は?

「八百長」という言葉の発祥は明治時代までさかのぼります。

語源は、「長兵衛(ちょうべえ)」という名前の八百屋の店主でいて、その男のあだ名が「八百長」といったことに由来します。
八百屋の長兵衛だから八百長というわけですね。

この長兵衛という男、囲碁がとても上手でした。
当時、大相撲の年寄であった伊勢ノ海と囲碁仲間だったといいます。

伊勢ノ海は当時、大相撲の有力者でしたが囲碁の腕前では長兵衛の方がはるかに上でした。
しかし、長兵衛は伊勢ノ海に八百屋の商品を買ってもらえるように気に入られるため、伊勢ノ海との囲碁の勝負でわざと負けるということを続けます。

一説には、囲碁の勝負の時間を短くするためにわざと負けていたというものもあります。
また、わざと負けていることを相手に悟られないように、いつも一勝一敗になるようにしていたといいますから、この長兵衛という男、なかなかの策士ですね。

確かに気をつかう相手と勝負をすると、「わざと負けたほうがいいのかな」とか「早く終わりたいな」と思うことはありますよね。
今でも、お得意先の人と接待ゴルフや接待マージャンをするような場合はこんな気持ちになることもあるのではないでしょうか。
長兵衛もまさにそんな気持ちだったのかもしれません。
長兵衛も伊勢ノ海も囲碁のプロというわけではありませんから、わざと負けたり勝たせてもらったりするというのは罪のないことなのではとも思います。

ところがあるとき、この長兵衛がある囲碁会に出席したときのことです。
その囲碁会には本因坊秀元という人物が来賓として参加しており、長兵衛はこの人物と囲碁を指すこととなります。

さて、この本因坊秀元という人物。長兵衛や伊勢ノ海とは違って囲碁のプロ。
囲碁六段という腕前で、本因坊秀元というのは代々囲碁棋士の名前として受け継がれてきた名代なのです。

そして、この囲碁会で長兵衛と本因坊秀元が対戦することになったのです。

長兵衛もテンションが上がってしまったのでしょうか、なんとこの試合で長兵衛が本因坊秀元を打ち負かしてしまったのです。
このことで、長兵衛の囲碁の腕前の評判が世間の知るところとなりました。
となると、長兵衛と伊勢ノ海の囲碁の勝負の結果があやしいのではという噂が立ち始めます。
本因坊秀元に勝った長兵衛が伊勢ノ海に負けるわけがないというわけですね。

この後、長兵衛と伊勢ノ海の関係がどうなったのかということまではわかりませんが、この一件の後、真剣に戦っているように見せながら、事前に申し合わせたとおりの勝敗となるようにすることを、長兵衛のニックネームから「八百長」というようになったというのが定説になっています。

2002年に日本相撲協会が監修して発行された『相撲大事典』という本があります。
このなかの「八百長」という項目では、その語源についてはここまで説明してきたとおりに説明されています。

ただ、別の説として、長兵衛は囲碁ではなく花相撲に参加して、親戚のみんなの前でわざと勝たせてもらったことから八百長という言葉が生まれたという説もあります。
「花相撲」というのは、大相撲とは違い、余興的に行われる相撲の試合のことです。
詳しい経緯までは不明ですが、長兵衛が親戚の前でいいカッコをするためにわざと相撲の試合に勝たせてもらったことが由来であるという説もあるようです。

いずれにしても、「八百長」という言葉の由来は相撲と大きく関わりがあるというのは間違いなさそうですね。

八百長と相撲との関係は?

さて、八百長という言葉の語源と深い関係にある大相撲ですが、大相撲でもまた八百長事件疑惑が多く話題になることがあります。
有名な八百長疑惑事件をいくつかご紹介しましょう。

1963年9月場所の千秋楽での柏戸と大鵬の取り組みで起こった八百長疑惑事件です。
それまで四場所連続で休場していた横綱・柏戸が大鵬を破って全勝優勝を果たしました。
ところがこの試合の結果に納得がいかなかったのが、あの石原慎太郎さんです。
スポーツ紙でこの取り組みを八百長であると断言。

これに対して相撲協会は石原慎太郎さんを告訴するというところまで発展してしまいました。
後に両者は和解をしています。

また、1980年から1999年にかけて、雑誌の「週刊ポスト」が大相撲に八百長の疑惑があることを次々と報道して話題になりました。
この期間に実に6度に及ぶ八百長疑惑報道がなされ、金銭の受け渡しがあったものと糾弾されることとなりました。

さらに、1988年3月場所では、あの千代の富士の53連勝に対する八百長疑惑もありました。
1995年11月場所では当時、若貴フィーバーと言われていた実の兄弟、貴乃花と若乃花が優勝決勝戦で戦ったときも、八百長ではないかと疑われたことも。
それまで四連覇中だった横綱・貴乃花があっさりと負けてしまったことで八百長疑惑がもたれたのです。
八百長とまではいわなくても実の兄弟であるということから、真剣勝負にならなかったのではということもあったようです。

また、2005年から2007年にかけては当時横綱だった朝青龍に八百長疑惑がかけられたことも。

2017年には日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるった事件を発端として、その背景に横綱・白鵬をはじめとするモンゴル人力士の間で八百長が行われているのではないかという疑惑がもたれました。

勝敗がそのまま収入につながる世界であるということや、持ちつ持たれつであるという大相撲全体の雰囲気が八百長を生むのではないかといわれています。
「この前は勝たせてもらったので、今回は負けてやろう」ということで、自分も相手も収入が増えていくという構造があるというわけですね。
もちろん、そんな試合ばかりというわけではありませんが、そういう側面もあるのかもしれませんね。

いかさまによる勝負を八百長というのに対し、真剣勝負のことをガチンコといいますね。
実はこの「ガチンコ」という言葉も相撲から生まれた言葉なのです。
力士同士が立ち合いで激しくぶつかりあうと「ガチン!」という音がするということが語源となっています。

八百長にはまったく縁がない力士のことを「ガチンコ力士」といったりもします。
大人が子どもと遊ぶときにわざと負けてあげたりすることは、ほほえましい「八百長」ですが、大相撲に限らずプロの世界ではぜひ「ガチンコ勝負」を期待したいものです。
ガチンコである方が、結果的にはそのスポーツなり競技が盛り上がりますよね。

最後にまとめ

  • 八百長という言葉の意味は「真剣な勝負ごとと見せかけて、一方がわざと負けるうわべだけの勝負をすること」
  • 八百長の語源は明治時代の八百屋の店主長兵衛の通称から。
  • 囲碁の得意だった長兵衛が得意先の力士にわざと負けたことから、八百長が現在のような意味で使われるようになった。
  • プロスポーツなどの世界でも八百長が行われることもある。特に、語源となった大相撲の世界では八百長疑惑がたびだひ取り上げられる。
  • 八百長の対義語は「ガチンコ」。このガチンコという言葉も、立ち上がりで力士同士がぶつかりあう音を由来としている相撲発祥の言葉。
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