関西と近畿の違い

お笑い芸人さんの中でも、主に東京を中心に活動している芸人さんのことを「関東芸人」と呼ぶことがあります。
それに対して大阪を中心に頑張っている芸人さんのことを「関西芸人」といったりしますね。

関東地方という言葉の対義語として関西地方という言葉があるのは不思議ではありません。

関西という言葉と同じように使われる言葉に「近畿」というのがあります。
ただ、「関西芸人」とは言いますが「近畿芸人」とはあまり言いません。

では、この「関西」と「近畿」という言葉はそれぞれどんな意味なのでしょうか。
手元の辞書でそれぞれの言葉を調べてみました。

まず、「関西」という言葉の意味は次のように書かれています。

「(関東に対して関所の西の国の意)京都・大阪・神戸を中心とする一帯。京阪神地方。」

関東との対義語として使われるということなので、「関東芸人・関西芸人」のように使われるのは納得ですね。
一方、「近畿」という言葉の意味は次のように書かれています。

「(都に近い国々の意)近畿地方の略。」

そこで、「近畿地方」を調べてみると、
「京都・大阪・滋賀・兵庫・奈良・和歌山・三重の2府5県からなる地域。」と書かれています。

辞書の意味だけで見ると、「関西」よりも「近畿」の方がより広い地域を指しているように思われますね。
ただ、これだけでは細かい違いや語源などについてはわかりません。

フクちゃんフクちゃん

今回は、この二つの言葉の意味の違いや使い分け、語源について細かく見ていきましょう。

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「関西」と「近畿」の違いとは?

一般的なとらえられ方として、ざっくり「関西」と「近畿」が示す地域を示してみると次のようになります。

関西

大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県(2府4県)

近畿

大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県・三重県(2府5県)

これはあくまで、一般的なとらえられ方ですので、それぞれの言葉に厳密な規定があるわけではありません。

こうして見ると、「関西」に三重県を足すと、「近畿」になるということになるとわかりますね。
法律などで、定義が決まっているわけではありませんので、定義によっては含まれる府県が異なる場合があります。

たとえば、関西地域振興財団の定義によれば、関西の定義は次のようになっていました。

大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県・三重県・福井県・鳥取県・徳島県

初めにご紹介した関西の定義の地域にさらに、「福井県・鳥取県・徳島県」が加わっていますね。
また、関西広域連合では関西を次のように定義していました。

大阪府・京都府・兵庫県・和歌山県・滋賀県・鳥取県・徳島県

今度は、地域が少し小さくなっていますね。

ちなみに、関西地域振興財団と関西広域連合は合併して関西観光本部となっています。
この団体の目的は観光の振興を強化することですので、関西という地域を広めに見て多くの人に関西を楽しんでもらおうということから、このような定義になっているということのようです。

このように、定義によっては関西の定義は変わるものの、やはり、一般的には最初に示したとおり、
 大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県
の2府4県を指すというのが、正解といえそうです。

一方、学校の教科書では、「関西地方」という言葉より「近畿地方」という言葉が使われることが多いようです。
また、行政機関の名前や企業名にも「近畿」という言葉が使われることがあります。

たとえば、「近畿経済産業局」という役所があります。

こちらは、大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県・福井県の経済産業施策の総合的な窓口を担当する機関です。

「近畿」という名前がついていますが、こちらでも地域の定義が少し違いますね。
やはり、定義は一定ではないということがわかります。

驚くのは、この役所の英語表記が、「Kansai Bureau of Economy, Trade and Industry」となっていて、日本語では「近畿」という言葉を使っているにも関わらず、英語では「Kansai」という言葉が使われているのです。

実は、日本語では公的機関で「近畿」という言葉が使われていてもある理由から、英語表記では「Kansai」という表記を使っていることがあるといいます。
ある理由というのは、「近畿」という言葉の響きにありました。

実は、英語で「kinky」は、「風変わりな」という意味があり、「kinki」と書いてしまうとこの言葉と誤解されてしまう可能性があるからだとのことなのです。
そのため、海外では「関西」という言い方の方が知名度が高いといいます。

こんな事情もあり、ますます「関西」と「近畿」という言葉はほとんど同じ意味の言葉として使われるようになっているというわけです。

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「関西」と「近畿」どう使い分ける?

ここまで見てきて、「関西」と「近畿」とでは一般的には示す地域が違うものの、ほぼ同義のように使われているいたり、定義によって示す地域が違うということがわかってきました。
そのため、使い分けというのも厳密にはできないというのが結論のようです。

やはり、関東と対比させたいという場合は、関西という言葉が使われることが多いようです。
ですので、人や文化を指す場合は「関西」という言葉が使われます。

「関西人」とはいいますが「近畿人」とはいいませんね。
「関西弁」「関西風」というのも、「関東人」「関東風」との対比として使われる言葉です。

また、すでにご紹介したとおり、「kinki」という言葉が英語であまりよくない言葉と似た響きをもつことから、会社名・団体名には「KANSAI」という言葉の方が多く使われるようです。

また、「近畿」「近畿地方」という言葉は国の出先機関などの公的な組織が使用することが多いようです。
小学校、中学校の地理の教科書では、「近畿地方」という言葉で説明をしていることが多いようです。

ちなみに、大阪には「近畿大学」という大学がありますが、英語での表記は「Kindai University」となっています。
近畿大学の略称である「近大」のローマ字表記「Kindai」を使っているのは、やはり、「kinki」という表記を避けるためなのでしょう。
同じく大阪にある「関西大学」は、英語表記をそのまま「Kansai University」としています。

また、フジテレビ系列のテレビ局に「関西テレビ」というのがあります。
テレビ局の名前として、「近畿テレビ」ではなく「関西テレビ」としてるのは、四国の一部である徳島県も放送エリアとなっているので、近畿よりも関西の方がふさわしいとしてこの名前になったようです。

さらに、「近鉄」という略称で知られる「近畿日本鉄道」が「近畿」という言葉を使っている理由としては、もともと「関西急行鉄道」という会社と「南海鉄道」という会社が合併してできた会社なので、一方の「関西」という言葉だけが残ってしまうのを避けたからではないかと言われています。

このように、「関西」「近畿」のどちらを使うようになったのかについての理由や背景はさまざまのようです。
ただ、「関西」という言葉の方が示す地域があいまいであることや、英語で表記したときに意味が誤解されることがないということから、今後は「関西」の方が選ばれることが多くなっていくのではないかと想像されます。

ちなみに、関西出身の堂本剛さんと堂本光一さんのジャニーズのユニット名は「KinKi Kids」ですよね。
もちろん、英語で「kinky」という言葉が「風変わりな」や「変態」という言葉であるということはお二人とも承知の上で、そのことをネタにしたりしています。
さすが関西人のお二人ですね。

さらにちなみに、不動産の会社にキンキホームというのがあります。
こちらの会社は登記上の本店は宮城県にありますが、もともと大阪府で営業を開始したためこのような名前をつけました。
現在、営業所は全国各地にあり、宮城県仙台市のほか滋賀県の大津市や、広島県広島市に地域本社があります。
少しややこしいですが、そんな会社もあります。

「関西」と「近畿」の語源は?

では、最後に、「関西」と「近畿」のそれぞれの言葉の語源を見ていくことにしましょう。
ここまで何度かご紹介してきましたが、関西という言葉は関東という言葉と対比するために生まれた言葉といわれています。

平安時代ごろから、「近江逢坂の関より西の地域」が関西と認識されていたようです。
また、鎌倉時代になると、鎌倉幕府が統治していた三河国・信濃国・越後国よりも東の地域を関東と呼ぶようになり、それより西の朝廷が統治している地域を関西と呼ぶようになりました。

さらに時代が下って、江戸時代、江戸を中心とした地域が「関東」と呼ばれるようになると、それと同じように京都や大坂を中心とする地域を「関西」と呼ぶようになったといいます。
ただし、江戸時代は、関東に対しては「上方」という言葉が長く使われており、今のように関東の対義語として関西という言葉が使われるようになったのは明治時代以降だといわれています。
江戸時代の「関西」という言葉は指し示す地域は一定ではなかったようです。

畿内に近い国のことを指していたり、鈴鹿関より西の西日本全体を指していたり、近江逢坂の関より西の西日本全体をとしていたりと時と場合によってさまざまでした。
一方、「近畿」という言葉のもともとの意味は「都に近い地域」というのが語源です。

「畿」という字は、古い日本語で「都」という意味を表します。
また、古代日本の律令制度では「畿内」という言葉の方が多く使われてきました。
この「畿内」という言葉が「近畿」に変化したといわれています。

今でも「首都圏」という言葉がありますが、「近畿」もこれと同じような意味ですね。
「近畿」という言葉も「関西」という言葉と同じく、広く使われるようになったのは明治時代以降です。
明治時代の地理の教科書で「近畿」という言葉が採用され広まりました。

明治36年(1903年)に発行された、国が定めた教科書「小學地理」に次のような記述がありました。
「畿内すなわち都周辺の天皇の直轄地、山城・大和・河内・和泉・摂津の五国とその近隣地域、丹波・近江・伊賀・伊勢・紀伊・播磨などを近畿地方とする」
今でも、日本の地方区分として教科書では「近畿地方」という言葉が使われているのは、このあたりにルーツがあるようです。

ですので、「近畿地方」といえば、「大阪府・京都府・滋賀県・兵庫県・奈良県・和歌山県・三重県」の2府5県であると考える人が多いようです。
ただ、関西人の中でも三重県を近畿に入れるかどうかで意見が分かれることがあります。

ちなみに、1963年に制定された近畿圏整備法では、「大阪府・京都府・滋賀県・兵庫県・奈良県・和歌山県・三重県・福井県」の2府6県がこの法律の及ぶ範囲とされています。

最後にまとめ

  • 「関西」と「近畿」に法的に厳密な取り決めがあるわけではない。
      関西:大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県(2府4県)
      近畿:大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県・三重県(2府5県)
    というのが、一般的な定義。
  • 一般の企業や団体には「関西」という言葉が多い。
  • 学校の教科書や公的な機関の名前には「近畿」「近畿地方」という言葉が使われていることが多い。
  • 「近畿」という言葉をローマ字で表記すると「kinki」となり、英語の「風変わりな」「変態」という意味の「kinky」と似てしまうことになり、英語表記としては避けられることが多い。
  • 関西という言葉は、関東と対比的に使われる言葉として生まれた。江戸時代には、「上方」という言葉が使われていて、関西という言葉が一般に使われるようになったのは明治時代以降。
  • 近畿という言葉は、「都に近いところ」という意味。古代律令制で使われていた「畿内」という言葉が語源。近畿という言葉も関西という言葉同様、明治時代以降に広く使われるようになった。
  • 近畿という言葉が広く使われるようになった理由は、明治時代の教科書に使われたこと。その背景もあり、今でも教科書での地域区分の名前としては、近畿地方が使われている。
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